| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-025 (Poster presentation)

行動学的視点から考えるネズミの生態

中武 泰成 (横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校)

目的:人と関わりの深いネズミは害獣で繁殖力が強いというイメージがあり、ネズミは駆除すべきという考えが強く、その影響は野生のネズミにも及んでいる。しかし、現実にはレッドリストに載るネズミは増加している。

この対策として考えたのはネズミを知ることである。先入観による誤解をとくには彼らを理解する必要があると考える。そのため今回は飼育下におけるネズミを調査し、結果から野生での生活を考察することで彼らの生態を明らかにすることを目的とした。

実験内容:今回は自然で暮らす野ネズミと都会などで暮らす家ネズミを用意し外見の特徴の観察と複数の行動実験を行った。使用したネズミは、ラット(家ネズミ)・ハツカネズミ(家・野ネズミ)・スパイニーマウス(野ネズミ)の三種類を使った。行った行動実験は、マウス迷路実験・嗅覚実験・モーリス水迷路実験・オープンフィールドテストの4つである。

結果:外見の特徴の観察から、ラットは剛毛で艶のある毛を持ち、四肢の指が長く器用に使える。ハツカネズミとスパイニーマウスは、ラットに比べて小柄で毛並みは整っている。

スパイニーマウスのほうは背中の毛が針状になっていて、目が半球ほど出ている。

ラットは嗅覚テストより優れた嗅覚と記憶力を持っていることがわかった。また、嗅覚に頼った行動をした時と、記憶力に頼った行動をしている時それぞれに違いがあることがわかった。

ハツカネズミはマウス迷路実験より、身の危険を感じやすいのは物理的な害だということがわかり、これを利用した仕掛けを使いマウスの学習能力が見られた。

スパイニーマウスは嗅覚実験とオープンフィールドテストから臆病な性格であることがわかり、他の2種類のネズミとは違う行動傾向であることが分かった。


日本生態学会