| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T14-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

地下茎伸長が開花周期を決める!? ササ・タケ類の空間明示的モデリング

立木佑弥 (九大・理)

ササ・タケ類は長寿命一回繁殖型のクローナル植物である。発芽から開花枯死までの期間(開花周期)は種によって異なるが、熱帯では開花周期が短く、分布を北上するに従い開花周期が長くなる地理的傾向が存在する。興味深い事に、開花周期の地理的傾向に付随して地下茎伸長様式も変化する事が知られていた。熱帯域の種は短い地下茎を有し株立ちする一方、温帯の種は水平に長い地下茎を展開し、稈は散在する。本発表では、空間明示的数理モデルを用いて、開花周期と地下茎伸長様式の地理傾向が空間の不均質性に対して局所適応した結果創出された可能性について議論する。まず、不均質な場におけるクローナル繁殖における地下茎伸長様式の進化を議論する。地下茎が短い場合、空間的に展開する際に同一ジェネット内で同じ空間をめぐる競争が激化するため、地下茎を長くする淘汰圧が常に作用する。その結果、均質な空間においては、地下茎が長く進化した。空間不均質性を導入すると、好適空間の頻度および、好適パッチのサイズが共に小さいときにのみ地下茎が短く進化した。この条件下では、広い範囲にクローナル成長する事でむしろ不適地にジェネットを展開してしまうコストが生じる為、短い地下茎が有利となった。次に開花周期の進化に地下茎の長さが与える影響について議論する。地下茎が短い時には、クローナル繁殖時のジェネット内競争によって、成長がすぐに頭打ちになってしまうため、クローナル繁殖から有性生殖へのシフトを短い周期で行う事が有利となった。一方、地下茎が長い時にはジェネット内競争を回避できるために、クローナル繁殖による成長が頭打ちにならず、長い開花周期へと進化した。これらの結果をふまえ、熱帯と温帯で地下茎伸長様式および開花周期が異なる原因について、撹乱レジームと光環境の不均質性の観点から議論したい。


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