| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T16-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

生態系改変者ミミズが土壌炭素動態に及ぼす影響

金田哲( 国)農環研)

ミミズは、有機物を摂食し分解することで土壌炭素の無機化を促進し、団粒を形成し団粒内の有機物分解を遅延させることで土壌炭素を蓄積させる事が報告されている。ミミズは有機物分解を促進させる効果と遅延させる効果の2つを有しているが、ミミズが土壌炭素動態に及ぼす影響、およびそのメカニズムは十分には明らかになっていない。そこで演者は、広く日本に分布するサクラミミズを地中生息性ミミズのモデル生物とし、ミミズの分解促進効果と遅延効果を、培養期間中にミミズを除去することで評価した。今回紹介する実験は2つで、実験1では実験開始後20日間のみミミズ1個体を土で培養しその後除去する区と、ミミズを投入しない土のみの区の2つを設け、実験開始後1年間培養した。ミミズバイオマスの増加につれて団粒形成量が増加することが明らかになっている。実験2ではミミズのバイオマスを変え20日間培養した後ミミズを除去し、実験開始後1年間培養することでバイオマスの影響を評価した。両実験とも、定期的に土壌呼吸を測定し、実験終了時に土壌炭素濃度を測定することでミミズが炭素動態に及ぼす影響を評価した。ミミズ投入時の20日間は、ミミズ処理により土壌呼吸速度が増加し、実験2ではミミズバイオマスが増加すると共に土壌呼吸速度が増加した。その後ミミズ処理による土壌呼吸速度促進効果が次第に弱くなり、実験中期(実験開始後100日頃)からミミズ処理により土壌呼吸速度が低下した。実験2ではバイオマスが増加するとともに土壌呼吸が低下した。培養1年後の土壌炭素濃度に及ぼす影響は実験により異なり、ミミズ処理により増加または影響無しの結果となった。実験開始後20日まではミミズの摂食活動により土壌呼吸速度が増加し、ミミズ除去後はミミズによる団粒形成の効果により土壌呼吸速度が低下したと考えた。


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