| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T21-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

ラオス熱帯域における森林利用と地域住民の生活

天野正博 (早稲田大学・人間科学学術院)

REDD+においてセーフガードが事業実施の重要な遵守事項となっている。VCSなどボランティアベースでの認証制度ではプロジェクトレベルでの森林保全プロジェクトなどでの生物多様性、住民便益への配慮条件として、気候、集落、および生物多様性プロジェクト設計のための基準(CCB Standards)の取得を求めている。しかし、REDD+ではセーフガードを厳しい基準で設定すると、REDD+事業自体が機能しなくなるとの懸念がホスト国を中心にあった。また、セーフガードの概念が曖昧であるのに加え、住民の便益に影響する自然環境や住民の森林への関わり方が多様であることから、セーフガードの基準についての議論はされず、交渉内容はセーフガードの報告様式に限られている。

ここでは、ラオス北部山岳地の森林地域において、自然環境と住民の便益の関係を分析しながら、REDD+実施地域において住民便益のセーフガードをどのような形で具体化するかについて検討する。研究対象地はラオス北部の山岳地域に位置するルアンプラバン県ポンサイ郡であり、面積が3万haであり標高667m から1,657mの間に位置している。地域の森林率は1996年には72%であったのが、2010年には57%に減少している。減少要因は焼き畑である。

この地域では日本の二国間クレジット制度(JCM)に向けて環境省予算によりREDD+事業が2015年10月より開始されている。予想されている炭素クレジット量は14万CO2トン/年である。本報告では当事業における参照レベルとして森林生態系の炭素ストックに、森林保全に向けたREDD+活動およびそれへの住民参加を加え、REDD+事業開始により従前の住民の森林利用形態に比し住民福祉の向上に資するか否かを考察する。


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