| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T23-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

CCMの応用例:動物の集団行動の解析

阿部真人(国立情報研)

多くの動物は同種個体同士で集団を形成し生活する。特に、社会性昆虫のコロニーや鳥・魚の群れに代表される集団は、ただ集合しているのではなく、個体間の局所的な相互作用に基づいた集団行動を示し、分業や集団的意志決定といった単独個体には見られない適応的な性質をもつと考えられている。そのような集団行動が個体の集まりからどのように生じているかを理解するにあたって、個体間の相互作用のルールを明らかにすることは重要であろう。

近年、画像解析やGPSの技術が発達したことにより動物個体の移動軌跡データが得られるようになったため、集団行動の研究が急速に進みつつある。鳥や魚の群れは近傍個体と方向を揃えるといった単純な相互作用ルールのため、解析が比較的容易で理解が進んでいる。しかし一方、社会性昆虫のコロニーでは、個体間の相互作用が単純ではなく、さらに各個体は自発的な行動も示すため、解析が困難で、理解が進んでいないのが現状である。

動物一個体の自発行動に注目すると、乱雑で、多くの場合予測不可能であるため、確率的なプロセスによって生じているように見えるが、少数自由度の非線形力学系によって生じているという報告がある。そのため、個体間の相互作用に基づいた集団行動は、非線形力学系が結合した系として捉え、解析することができると考えられる。

本発表では、社会性昆虫トゲオオハリアリDiacamma sp.を材料に、複数個体の動きをトラッキングすることにより各個体の移動軌跡データを取得し、Convergent Cross Mappingを用い、個体間の相互作用を検出したことを報告する。これらの結果から個体間の相互作用ルールや、集団行動のメカニズムと機能について議論し、集団行動解析の新しいフレームワークを提案する。


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