| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-12  (Oral presentation)

叩く・群れる・ゆっくり泳ぐ、バショウカジキの不思議な生態

*岩田高志(セントアンドリュース大学・JSPS海外特別研究員, 東京大学・大気海洋研究所), 刀祢和樹(長崎大学大学院・水産・環境科学総合研究科), 河邊玲(長崎大学・海洋未来イノベーション機構・環東シナ海環境資源研究センター), 佐藤克文(東京大学・大気海洋研究所)

 バショウカジキは温暖な海域に生息する大型魚である。彼らは採餌の時に、群れで餌の魚群を取り囲む行動をとることが知られている。一方で、採餌以外の時の他個体の存在や群れ行動に関する情報はほとんどない。本研究では、バショウカジキの採餌以外における他個体の役割を明らかにするために、メキシコ・カンクン沖のカリブ海で野外調査を実施した。調査は動物装着型の行動記録計(深度、速度、加速度、温度を計測)およびビデオを用いて実施された。記録計を装着したバショウカジキ2個体から8.5時間の行動データおよび3時間のビデオデータを取得した。記録計の不具合により、一個体からの速度は記録されていなかった。行動記録計の記録期間には、急加速など特徴的なイベントが記録されていないことから、装着個体は巡行遊泳中であったことが考えられる。巡行遊泳中のバショウカジキの平均遊泳速度と尾鰭のストロークの卓越周波数は、個体Aが0.72 m/s、1.33 Hz、個体Bが1.09 Hzであった。本研究において、バショウカジキの巡行遊泳時の平均遊泳速度と尾鰭のストロークの卓越周波数を直接計測した結果、他の魚類における過去の研究と比較し同程度であったことが示された。個体Bに装着したビデオカメラの記録から、33分間、個体Bの後ろを他個体が付いて来る様子が確認された。後ろから付いて来る個体の尾鰭の平均ストローク周波数は0.82 Hzであり、個体Bに比べ低かった。また、行動記録計から個体Bのストローク周波数が1 Hz以下となることが9回あり、そのうち7回で、映像には個体Bのすぐ近くに他個体が突然写り込んできた。おそらく個体Bの前方を泳いでいた個体が後ろに下がってきたものだと考えられる。個体Bのストローク周波数は前方に他個体がいる時に低くなる可能性が示された。以上の結果からバショウカジキは、前方を泳ぐ個体が作った水流を利用することで、遊泳コストを抑えていたことが示唆された。


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