| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-06  (Oral presentation)

農業害獣の最適管理ーシカ・イノシシ・アライグマの比較

*山村則男(同志社大学・文化情報), 幸田良介(大阪府立環境農林水産総合研究所)

 近年、シカ・イノシシ・アライグマなどによる農業被害が増加している。その対策として、狩猟やワナによる捕獲と、耕作地を囲う柵による防護がなされている。しかし、捕獲や防護にはコストが伴うので最適な投資を決定するための数理モデルを提唱する。モデルは、増殖(ロジスティク式)と捕獲投資額に比例する捕獲率(密度が低いと捕獲率が低下するという密度効果を含む)から決まる害獣の密度の平衡点を計算し、耕作地への害獣侵入率は防護投資額の減少関数とする。そこで、単位耕作面積あたりの捕獲投資額と防護投資額および被害額の和を最小とする最適投資を求める。
 モデルに含まれるパラメータの値によって、(捕獲投資、防護投資)の最適解は、(0,0),(0,+),(+,0),(+,+)のいずれかとなり、+の場合はその最適額を計算することができる。パラメータの変化に対して最適解は単純でない変化を示した。例えば、動物の増殖率の増加に対して最適捕獲投資額は極大値を持つのに対して、最適防護投資額は単調増加となる。シカ・イノシシ・アライグマについての個体群パラメータおよび、各種に対するワナと防護柵の価格データから検討すると、概ね、最適な対策費の総額は、イノシシ、アライグマ、シカの順となった。また、イノシシは防護に重点を置き、アライグマは捕獲に重点を置くべきことがわかった。実際に行われている対策が、モデルで予測されるものと一致しているのかどうかの検討も行う。


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