| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-04  (Oral presentation)

圃場整備済み水田で営巣するケリの繁殖状況

*脇坂英弥(環境学園専門学校)

水田は春から夏にかけての農繁期に耕起・湛水・代かき・田植えなどが施されるのにともない,農閑期の乾いた草原から農繁期の一面の湿地へと劇的に変化を遂げる.このように水田が乾いた草原から湿地へと急変する農繁期が,地上営巣性の鳥であるケリ(チドリ科)の産卵,抱卵および育雛時期にあたる繁殖期と重複することから,農作業にともなう人為撹乱が本種の繁殖に何らかの影響を与えることは想像に難くない.これまでのケリの繁殖成績に関する先行研究は,農地に営巣した本種の繁殖失敗の要因が捕食者(たとえばカラス類,猛禽類など)であることを示したものに限られており,とりわけ農作業にともなう人為攪乱が本種の繁殖成績に与える影響についての視点はなかった.
ケリのように水田で営巣する鳥類と農作業にともなう人為の相互作用の評価は,農業と田園鳥類の共存を考える上で重要あり,田園鳥類の保全の手法を知る手掛かりに成り得ると考えられる.また,水田の出現以前は,恐らく河川の氾濫原を主要な繁殖ハビタットとして利用していたと考えられる本種の繁殖戦略を知る上でも,水田での人為撹乱に対していかに対応しているのかを把握することは意義深い.
本研究は,圃場整備済み水田の農事暦とケリの繁殖のタイミングに着目し,耕起と湛水といった農作業にともなう人為撹乱が,本種の繁殖成功に及ぼす影響を8年間の調査データから解析したものである.


日本生態学会