| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-02  (Oral presentation)

ススキ実験群落における数種の草本植物の生育特性-光環境に着目して-

*白土晃一(東大院・農), 山田晋(東大院・農), 根本正之(東大院・農、明治大・農), 大黒俊哉(東大院・農)

生物多様性保全への意識の高まりから、緑化に際しても種多様性に富む植生の復元や創出が求められている。ススキが優占する半自然草地では、立地条件や管理手法によっては種多様性に富む群落が形成し得る。一方、ススキの優占度が高いと構成種は光環境悪化により消失することも分かっている。ススキ群落の形成過程で構成種がいかに群落中で成長するかを理解することが種多様性に富むススキ群落の創出において重要である。そこで本研究ではススキを用いて人工的に群落を創出し、その群落内で生育型の異なる供試種< 直立茎種、匍匐茎種 >を育成し、群落の形成過程と群落内光環境のモニタリングを行った。
ススキ苗ポット6鉢を1辺15 cmの正六角形の形に配置し、その中心に供試種苗ポットを設置することで実験群落を作成した。異なる光環境に対する供試種の反応を把握するため、供試種のみの区< 対照区 >、無施肥のススキを配置した区< ススキ低成長区 >、緩効性肥料を施用したススキを配置した区< ススキ高成長区 >の3処理区を設置した。実験期間は2016年7月1日から9月20日で、実験終了時に供試種の生育状況を調査した。
実験終了時のススキ低成長区、ススキ高成長区のススキの草丈はそれぞれ50.0 cm、96.4 cmとなり、地表5cm地点の相対光量子束密度はそれぞれ46.3 %、16.6 %であった。その群落において、直立茎種はどの区においてもバイオマスの有意差は確認されなかったが、匍匐茎種はススキ高成長区で有意にバイオマスが低下した。直立茎種は被陰に対して草丈の伸長により生育不良を回避したが、草丈の低い匍匐茎種は被陰の影響を受けやすかったと考えられる。
今回の実験は裸地への植栽を想定した1年目の結果であり、2年目以降の群落形成と供試種の生育状況をモニタリングする必要がある。また、土壌環境によって異なるススキの生育状況を把握し、形成される群落形態を予測することが確実な種の導入に繋がると考えられる。


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