| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-04  (Oral presentation)

畑地由来の養分・塩類負荷及び競争種がミズゴケ類の被度に与える影響

*佐藤奏衣(札幌市立大学), 矢部和夫(札幌市立大学), 矢崎友嗣(北海道大学), 木塚俊和(北海道立総合研究機構)

 農地の肥料の使用によって高濃度になった栄養塩が地下水を通じて下流域の湿原へ流れ込む事によって、湿原植生の劣化、特にミズゴケ群落の減少が懸念されている。本研究では、栄養塩の負荷の異なる二つの湿原に調査地を設定し、それぞれに設置した調査区内の定点ごとのミズゴケ類の出現を目的変数、ミズゴケ類に対する環境要因を説明変数とするGLMM解析によって、ミズゴケ群落の出現に対する養分負荷の影響を明らかにする事を目的とした。
 調査地は、北海道苫小牧市内の植苗および柏原である。事前調査により、植苗は上流からの農業排水によって表層水が汚染されている可能性があり、柏原は汚染が少ない地区と推定された 。各調査地に1辺 100 mの正方形の調査区を設置し、20 m間隔で36地点の定点を設置し、各定点には観測孔を設けた。2014年~2016年までに地下水調査と植生調査を実施した。植生調査は各定点に4m2の方形区を設置し、群落種組成およびその被度(%)をそれぞれ調査した。調査期間中における平均水位,水位変動,pH,アニオン,カチオンおよび競争種のデータを説明変数、ミズゴケの出現頻度を目的変数、調査地をランダム効果としてGLMM解析を行った。なお、調査期間中における地下水の水質・水位の顕著な季節変化は認められなかった為、水質・水位は調査期間中の平均値を採用した。ミズゴケ類の出現頻度は、「出現=1」、「無=0」と設定した。又、モデル選択は、総当たりによるAIC比較を行い、ΔAIC(最少モデルのAICからの差)が2.00以下のモデルを採択した。なお、多重共線性が認められた複数の変数については、1変数だけ残し説明変数とした。
 GLMM解析によるモデル選択の結果、SO42-、Ca2+、無機態窒素、競争種およびホロウ種が有意に効いており、そのうち、SO42-は正の係数、その他は負の係数をもつ説明変数であった。


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