| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-07  (Oral presentation)

いわき落葉広葉樹二次林の約20年間にわたる成長

*千葉幸弘(森林総合研究所)

 旧薪炭林で、40年以上利用されてこなかった落葉広葉樹林(福島県いわき市)で、1990年に7m、10m、12m、15m四方の伐採区を設定し、その後の林木の成長、空間構造等の変化を継続調査してきた。また伐倒時に年輪解析を行っており、現在の林齢は約90年生である。
 主たる林冠構成樹種はコナラ、ミズナラ、アカシデで、そのほかにウリハダカエデ、ブナが混じる。中層以下の構成種はアオハダ、ウワミズザクラ、コシアブラ、ハクウンボク、リョウブ等である。haあたり立木本数は、1994年の1151本から更新木の増加により2000年に1500本になったが、その後コナラやミズナラ等の林冠木の枯損が増え、個体数は減少傾向にある。
 林冠木の平均樹高は、1994年16m、2008年19m、2016年21mであった。胸高直径4cm以上の個体で、haあたりバイオマスは、1994年181ton、2000年182ton、2008年204ton、2016年229tonであった。2000年以降のバイオマス増加速度は概ね2.9ton/haであった。
 小面積ながら調査地内に設定した伐採区でその後の更新状況を調査したが、7mおよび10m四方の伐採では更新状況に効果はほとんど認められない。12m四方では更新個体が一時的に増加するが、多くが数年程度で枯死する一方で、コシアブラやアオハダ等は樹高7m以上に達しており、ブナやウワミズザクラ等が混在して、徐々に林冠を埋めつつある。ただ、その更新状況は林床の明るさや隣接林分の構成種等の条件でかなり異なる。林内の明るさについては全天空写真による開空度で評価し、6〜10月の着葉期で12.4%(最大17%、最小9%)、11〜4月の落葉期で42.3%(最大54%、最小28%)であった。本調査地の林冠は長期間にわたって閉鎖し、新たな更新は概して困難な状況にある。
 さらに1990年以降のすべての個体重をもとに、個体サイズ分布とその変化をMNY法(Hozumi et al, 1968)等により解析し、樹種や樹齢が混在する森林の定量的な成長解析についても検討・報告する。


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