| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-02  (Oral presentation)

雌性両全性異株と自家受粉の共進化に関する理論モデル

*山岸栄大(京都大学), Ross Booton(University of sheffield), 山内淳(京都大学)

被子植物の多くは各個体が雄機能と雌機能を兼ね備えた雌雄同株であるが、それ以外にも多様な性様式が知られている。その一つとして、両性株と雌株が混在した雌性両全性異株がある。この性様式の主な原因は、ミトコンドリアゲノム上の突然変異による雄機能の不全(雄性不稔)、すなわち細胞質性雄性不稔である。近年、細胞質性雄性不稔の進化に対し、植物集団の自家受粉率が重要な影響を与え得ることが理論研究によって指摘されている。しかしながら、これらの研究は自家受粉率を固有の定数として扱い、植物集団における自家受粉率の進化を考慮していない。本研究では、細胞質性雄性不稔と自家受粉率の共進化プロセスを、理論モデルによって検討する。適応ダイナミクスの手法に基づく解析の結果、雌性両全性異株集団では両性個体集団における場合よりも自家受粉率の進化が高まりやすいこと、および自家受粉率の進化によって変異ミトコンドリアを有する雌株が低頻度に抑えられる傾向があることが示された。これらのことから、自家受粉を、利己的な細胞質遺伝因子である変異型ミトコンドリアによる雌化に対する、核遺伝子の対抗戦略と見なすことができる。また、雌性両全性異株集団においては、集団内の自家受粉率に多型が進化する可能性が示唆され、個体ベースシミュレーションによってこれを確認した。


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