| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-08  (Oral presentation)

つる植物におけるホスト選択理論:環境の不均質性、不確実性の効果

*立木佑弥(京都大学ウイルス・再生医科学研究所, 九州大学大学院理学研究院), 深野祐也(東京大学大学院農学生命科学研究科)

つる植物は周囲の物体に巻き付いて登る性質をもつ。自身は剛性をほとんど有さず、体を支えることができないため、巻き付き相手ホストの選択は生活史戦略上基本的に重要である。植物は視覚を有さないために、つるや巻きひげを旋回させることでランダムにホストに接触する。その後屈触性により巻き付くが、触れたホストが必ずしも上方向への成長にとって好適なものであるとは限らない。近年、つる植物はホストに一度触れた後に巻き付くか否か化学受容を介して意思決定を行うことが知られてきた。例えば同種個体に触れた際には高い確率で巻きつかず、別のホストを探索する。これは同種への巻き付きは他の好適なホストに巻き付いた場合に比べて成長率が小さくなるからであろう。
本研究では、最適採餌理論を援用し、つる植物が化学受容により不適なホストを認識した際に巻き付く確率に関する理論を提案する。不適なホストに遭遇した際に巻き付くか否か(条件巻付確率)はその際得られる利益とリトライによる巻きひげの劣化や老化などのコストのバランスで決定される。不適であっても利益が十分高い場合や、リトライコストが高い場合には、たとえ不適であっても必ず巻きつくが、これらが小さいときには、ホスト選択が進化した。植物は種子散布によって分布するため周囲の状況を選べず、不確実性が存在する。そのため、周囲のホストの総数、好適/不適の割合がばらつく。これらの効果を考慮した結果、ホストの総数が有限の際には、最適条件巻付確率が中程度の値に進化した。さらに、植物が一度巻き付かなったホストは回避して別のホストを探す(非復元抽出)場合、中間の好適/不適割合のときに条件巻付確率が最も小さくなった。よって、周囲のホスト環境と植物のホスト探索の特性によって、ホスト選択の程度が異なることが予測された。最後に、この理論予測を検証するためのヤブカラシ倍数体を用いた実験について議論する。


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