| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-02  (Oral presentation)

出穂時期が異なるススキ・オギ混生域において両種の交雑に果たす攪乱の役割

*小路敦(農研機構・北海道農研), 山下浩(農研機構・九州沖縄農研), 眞田康治(農研機構・北海道農研), 田村健一(農研機構・北海道農研), 上床修弘(農研機構・九州沖縄農研), 奥村健治(農研機構・北海道農研), 我有満(農研機構・九州沖縄農研, 現在:農研機構・中央農研)

【背景および目的】
ススキとその近縁種であるオギは、比較的容易に自然交雑するため、それらの自然交雑種である「オギススキ」の存在が、西日本を中心にこれまでにも報告されている。これらのうち、高性かつ多収の系統である「ジャイアントミスカンサス」は、欧米を中心に、バイオマス資源作物として有望視されている。一方、西日本の高標高地域や東北地方以北などでは、一般に両種の出穂時期が異なるため、自然交雑する例は少ないと考えられる。北海道の寒冷な地域においては、「ジャイアントミスカンサス」の栽培が困難であるため、耐寒性の高い両種の雑種が望まれている。そこで、ススキとオギの出穂時期が異なる高標高・高緯度地域においても、刈払い等の攪乱によって、両種の出穂が同調し、交雑が起きうるか否かを検討した。
【材料および方法】
北海道札幌市においてススキを6月下旬に刈り払い、本来8月上頃である出穂を遅延させ、オギの出穂との同調を試みた。開花直前の両種の穂を密着させて支柱に固定し、袋掛けして周囲からの花粉による交配が起きないようにした。登熟した穂を採取、無加温の室内にて保存し、次年度5月に播種、育苗した。ススキとオギの中間形態を呈する幼苗の一部を用いてフローサイトメータにより、核DNA量を測定し、ススキとオギの中間の核DNA量を有する個体を、両種の雑種と判定した。
【結果および結論】
6月下旬の刈払いにより、北海道におけるススキの出穂時期のピークを、9月のオギの出穂時期に同調させることが可能であった。また、刈払いで出穂を同調させた両種を交配することで、両種の雑種作出が可能であった。これらの結果から、出穂時期の異なるススキ・オギ混生域において、本来両種は交雑しないが、刈払いなどの弱度の攪乱を通じた出穂同調により、交雑可能であることが示された。このことは、半自然生態系が有する「生態系サービス」のひとつと考えることもできよう。


日本生態学会