| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) J02-05  (Oral presentation)

四万十川流域および近隣河川におけるテナガエビ類2種の動態

*山下慎吾(魚と山の空間生態研究所)

テナガエビ類は,四万十川流域では「川エビ」と呼ばれ,川で泳ぐ子ども達の遊び相手であり,川エビとキュウリの煮物のような独自食文化にもなるなど,重要な地域資源となっている。ところが,その漁獲量が2010年頃から急激に減少しはじめた。例えば,中流部にある西部漁業協同組合の取扱量は,2009年の約2.5tをピークに,約2.0t,約1.0t,約0.7t,約0.6t,0.15tと年ごと連続的に減少し続けている。近隣から持ち込まれる四万十市内の魚市場でも勾配はやや緩いものの同様に減少傾向を示している。これらの数値は主にコロバシ漁によって捕獲された川エビ類の総重量であり,種別,サイズもしくは雌雄別の動向は明確ではない。

四万十川流域にはヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum,ミナミテナガエビ M. formosense,テナガエビ M. nipponense の3種が生息しており,前2種が主な漁獲対象となっている。1973-75年夏季に調べられた分布調査により,種によって流程分布様式や微生息場所が異なり主に夜間に瀬を遡上することが報告されている。2002-03年の日中における調査により,前2種の体長組成や繁殖などについて述べられている。個体群の保全を検討するためには,種別の長期的定量データが欠かせず,近隣河川と比較可能なデータも必要となるが,そのような情報がないのが現状である。

そこで,テナガエビ類2種の個体群安定性や保全対策の検討を目的として,2012年5月から2016年12月まで毎月,四万十川流域において,小型定置網を用いた定量調査により,種別個体数,体サイズ,雌雄比率,湿重量等について記録した。さらに,近隣河川でも同じ手法で定量採捕をおこなった。これらの結果をまとめ,四万十川流域および近隣河川におけるテナガエビ類2種の動態を報告するとともに,今後の保全対策について提案する。


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