| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-01  (Oral presentation)

鳥類の種子散布における群集間ネットワーク構造とその変化について

*大河原恭祐(金沢大学自然システム学類), 木村一也(石川県森林組合, 金沢大学地域連携センター), 庄藤瑞英(金沢大学自然システム学類), 松平有加(金沢大学自然システム学類), 佐藤文男(山階鳥類研究所)

果実食性の鳥群集と果実を生産する植物群集との間には様々な環境で被食型種子散布を通じた共生関係が成立している。日本では秋に多くの果実食性の鳥種が渡りのために飛来し、同じ時期に多くの液果植物が果実を成熟させ、捕食されることにより種子散布が行われている。2つの群集の間には種子散布を通じた共生系ネットワークが構築されているが、渡り鳥の種構成や飛来数は年によって変化し、また植物の果実生産も年によって変動する。これら群集の特徴は共生系ネットワークの構造や安定化と大きく関係していると考えられる。演者らは2005年から2016年にかけて福井県越前市織田山で行われている鳥類標識調査にて捕獲された鳥種の糞や吐き出し物に含まれていた種子の種類や頻度の調査を行ってきた。果実食性のツグミ類やメジロ、ヒヨドリなどを対象に解析を行ったところ、総計16種から66種の植物種子が1770例採集され、主要な種子運搬鳥種はシロハラ、メジロ、マミチャジナイで例数の82.5%はこれら3種で占められていた。また植物はタラノキ、カラスザンショウ、ヒサカキなど9種が運搬例の79%を占めていた。しかし、年によって運搬されていた種子の種構成は異なり、特に周辺の果実量、豊凶状態に依存した変化を示した。さらに優占的な鳥種の運搬頻度や各種が運搬していた種子の種構成にも変化があり、特にツグミ類の運搬頻度には年変動が見られた。群集間のネットワークは優占的な鳥種、植物種を中心とした入れ子型構造を示したが、今回はこの構造に着目して解析を行ったところ、構造度(WNODF)も年によって変動し、果実の豊凶や各鳥種の運搬形態と関連していた。また鳥種、植物種の構造への貢献度も年によって変化しており、特にツグミ類の貢献度は年変動が大きかった。これらのデータからネットワークの入れ子型構造に影響を与える要因について考察を行う。


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