| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-10  (Oral presentation)

植食者に与える影響は植物密度によって変わる:植物の連合防衛効果はいつも有効か?

*田村桃歌(奈良女子大学), 井田崇(奈良女子大学), 大串隆之(京都大学)

タバコはアルカロイドの一つであるニコチンを含んでいる。ニコチンは植食者を忌避させることが知られている。しかし、この忌避効果が植物集団レベルにおいてどのように作用しているかはわかっていない。固着性の植物では、隣接する個体が当該個体にとって正や負にも作用する。植物が集団を形成することで、植食者にとってより魅力的な餌として映ることもあれば(誘引効果)、逆に、集団としての防衛効果は、単独の時よりも大きな防衛効果を持つかもしれない(連合防衛)。
ニコチン量と植物集団の密度がどのように防衛効果に影響するかを明らかにするため、2016年にニコチン含量の異なる2品種のタバコ(ニコチン含量多い: BU、ニコチン含量少ない: LA)を用いて、3種類の密度(低:4個体・中:9個体・高:16個体)で、各品種だけの単植と両品種による混植を行い、それぞれ2m×2mのプロットを圃場に配置した。栄養成長が活発な5月28日から8月8日にかけて、各個体上の植食者の種類と数を計9回測定した。
ニコチンによる植物上の植食者数への効果は一定ではなかった。低密度プロットでは、全てがニコチンの多いBU個体の場合のみ(BU単植)、植食者数が少なかった。中密度プロットでは、プロット内にニコチンの多いBU個体が存在する時(BU単植か混植)、そうでない時(LA単植)より植食者数は少なかった。高密度では、隣にニコチン含量の少ないLA個体がいると(混植)、含量の多いBU個体の植食者数が少なかった。
タバコのニコチンによる植食者防衛効果は、個体群密度によって変化した。低密度では、連合防衛が重要な役割を果たしていたが、密度が増加すると個体あたりの効果は弱くなった。同時に、密度の増加は植食者を誘引するため、連合防衛効果は限定的である。これらの結果は、局所的な個体の空間配置(集団構造)と密度によって、個体の防衛形質の効果が変わることを示唆している。


日本生態学会