| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-051  (Poster presentation)

ヤノクチナガオオアブラムシにおける体表面炭化水素の地域間比較:異なるアリ種との共生はアブラムシの地域適応を引き起こすのか?

*山本哲也(信大院・総合工学), 服部充(長崎大・環境), 乾陽子(大教大・教育), 市野隆雄(信大・理、山岳)

アブラムシは、アリと相利共生関係を結ぶことがある。アブラムシは、自身が排泄する甘露を随伴アリに提供し、その見返りとして天敵からの防衛や衛生管理といったサービスを受ける。しかし、アブラムシと相利共生関係を結んでいるはずの随伴アリであっても、アブラムシを捕食することがある。そのため、アリに随伴されるアブラムシは、アリからの捕食を回避できるような形質を進化させていると考えられる。そこで、本研究では随伴アリとの共生なしでは生存できない絶対アリ共生アブラムシであるヤノクチナガオオアブラムシ(以下、ヤノクチナガ)に注目した。ヤノクチナガは、中部日本においてクロクサアリと高い頻度で共生する。クロクサアリと共生するヤノクチナガは、その体表面炭化水素(CHC)の組成がクロクサアリに類似していることが明らかになっている。さらに、クロクサアリは自身のCHCに類似した組成のCHCに対して攻撃性が低いことから、ヤノクチナガは共生アリに対して化学擬態による捕食回避戦略を持つことが明らかにされている。また、ヤノクチナガは地域的に異なるアリ種と共生関係を結ぶことがわかっている。そのため、異なる随伴アリ種に対して異なるCHCを示すことで、それぞれのアリ種からの捕食を回避していることが期待される。そこで、我々は異なるアリ種と共生関係を結ぶヤノクチナガのCHCを解析した。本発表では、地域間でのヤノクチナガのCHC変異の有無と、共生アリに対する地域適応が存在している可能性について話す予定である。


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