| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-069  (Poster presentation)

長野県上伊那地方における異なる立地条件の水田地域におけるハナバチ類群集の構造および植物との関係

*宮下佳奈枝(信州大学農学部森林科学科), 大窪久美子(信州大学学術研究院農学系)

近年、中山間水田地域の二次的自然は質的量的に変化し、著しい生物多様性の低
下が問題となっている。送粉生態系は植物の種子繁殖に重要で送粉効率のよいハナ
バチ類は特に貢献度が高い。しかし現在、人の自然への働きかけが急速に変わるこ
とで、送粉昆虫と植物との種間関係が変化し、送粉生態系への影響が懸念されてい
る。そこで本研究では伊那市の水田地域におけるハナバチ類群集の構造と植物との
関係性を明らかにし、生物多様性の保全策を検討することを目的とした。伊那市の
中山間水田地域から6地区を選定した。ハナバチ類群集及び植生、聞き取り等の調査
は2016年に実施された。全地区で5科12属26種701個体のハナバチ類を記録した。種
数と個体数共にミツバチ科が最大であった。特にマルハナバチ属の種数が多く、竜
西の地区では希少種2種が確認された。ハナバチ類の多様度はD及びE F地区で低か
った。また、全地区でハナバチ類の外来植物への訪花割合が高かった。個体数の多
いハナバチ類では、外来植物のシロツメクサには3種、ムラサキツメクサに対しては
2種の訪花頻度が高かった。在来植物ではクサフジとツリフネソウに対し、各1種の
ハナバチ類の訪花頻度が高かった。一方、全地区の畦畔群落はマメ科外来植物が優
占した。聞き取り調査からはD及びE F地区ではセイヨウミツバチの飼育が確認され
た。地域全体でミツバチ科が多く出現し、中でもマルハナバチ属の多様性が比較的
高いと考えられた。特に竜西では希少種の生息に適した立地環境条件の解明が必要
である。D及びE F地区ではセイヨウミツバチの個体数が多く、群集の多様度が低下
した。また、全地区の畦畔群落で外来植物が優占するため、ハナバチ類はこれらへ
の訪花割合が高かったと考えられた。特にマメ科外来植物への訪花頻度が高く在来
送粉生態系への負の影響が示唆された。在来種間での関係性については今後の保全
が必要である。


日本生態学会