| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-072  (Poster presentation)

単独性ヒゲナガハナバチ2種における訪花行動と送粉

*我孫子尚斗(筑波大・生物), 横井智之(筑波大・生命環境・保全生態)

単独性ハナバチ類において、雌は仔の餌資源や卵巣発達のために花蜜や花粉を採餌し、雄は雌探索のためのエネルギーとして花蜜を利用している。そのため、性別により訪花数や採餌内容が異なると考えられる。本研究では単独性であるシロスジヒゲナガハナバチとニッポンヒゲナガハナバチの2種に着目し、性別による訪花行動の違いがみられるかを調査した。筑波大学構内のムラサキツメクサ群落において、4月後半から5月後半まで数日おきに晴れた日を選び、調査を行なった。訪花行動として花序あたりの滞在時間と区画内における訪花花序数を記録し、消化管内の花粉の有無から採餌内容を判断した。さらに体表に付着している花粉数を訪花頻度の指標とした。9時から9時半までに訪花した個体を動画撮影し、撮影データをもとに花序あたりの滞在時間を算出した。また2×2mの区画を設置し、調査期間中に11時と13時にそれぞれ30分間観察し、飛来個体が区画に侵入してから出るまでに訪れた花序数を記録した。区画から出た個体はすぐに捕獲し、体表付着花粉数と消化管内花粉の有無を記録した。その結果、両種とも雌雄間で花序あたりの滞在時間に有意な差はみられなかった。雌の平均訪花花序数が6.8花であるのに対し、雄はほとんど訪花せずに区画を去っていた。消化管内を調べたところ、雌はほとんどの個体が花粉を採餌しており、雄は約6割の個体が花粉採餌を行なっていた。体表付着花粉数を計数したところ、雌の平均7968個に対して、雄は平均1188個と少なかった。以上より、雌は活発に採餌するが、雄はほとんど採餌を行なっていないことがわかった。ただし、約6割の雄は花粉を摂食していたことから、雌と異なる時間帯に採餌していることが示唆された。また、雄も雌と同様に花粉由来の栄養を必要としていると考えられる。


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