| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-103  (Poster presentation)

オオセンチコガネの色彩型の移行帯に関する研究

*荒木祥文, 曽田貞滋(京大院・理学研究科)

表現型の異なる個体群間における移行帯は、生物の多様化を研究する上で非常に興味深い研究対象である。近畿地方に生息するオオセンチコガネ(Phelotrups auratus Motschulsky)では、赤色型、緑色型、そして瑠璃色型の3種類の色彩多型が見られ,それぞれの色彩型がまとまって分布することが知られているが、それらの個体群の間の移行帯についてはこれまで本格的な調査、および研究がなされていなかった。本研究では、赤色型の見られる京都府・愛宕山から瑠璃色型の見られる奈良県・吉野山の間の12箇所で採集されたオオセンチコガネを用い、反射スペクトルによる色彩表現型の評価、mtDNA解析、およびRADシーケンス(Restriction site-Associated DNA sequence)を利用した核DNA解析を行い、集団遺伝学的構造を明らかにした。その結果、赤色型と緑色型の移行帯の存在が明確に示された。すなわち、赤色個体群と緑色個体群が一度分断され、その後に二次的に接触して交雑帯が形成され、交雑個体が何らかの選択圧にさらされていることによって交雑帯が維持されていることが示唆された。しかしながら、緑色個体群と瑠璃色個体群の間では遺伝的差異はほとんど見られず、集団遺伝学的構造の移行帯は認められなかった。


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