| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-109  (Poster presentation)

階層ベイズモデルによるイノシシの密度推定と農業被害予測 ~広域な行政データをどう使うか~

*石塚直道(東京大学(大学院・農)), 香川幸太郎(統計数理研究所), 栗山武夫(兵庫県立大学(自然・環境科学研究所)), 鈴木牧(東京大学(大学院・新領域)), 横溝裕行(国立環境研究所), 宮下直(東京大学(大学院・農))

近年増加しているイノシシによる農業被害に対し効率的な管理を考えるため、千葉県房総半島地域をモデルケースとして、イノシシの個体数と景観および実際の農業被害の関係から、引き起こされる農業被害リスクを予測する統計モデルを構築した。
個体数について、イノシシは局所個体数を推定する手法が未発達なため、市町村ごとの箱ワナCPUEデータを取得しOsada et al(2015)により市町村ごとのイノシシ個体数を推定した。推定された市町村ごとの個体数は、大字における箱ワナあたりの捕獲数を密度指標として個体数と景観の効果との関係を明らかにし、詳細なスケールの個体数へ景観からダウンスケールした。
農業被害リスクの予測については、実際の農業被害を農家へのアンケートにより調査し、個体数と景観の効果と実際の被害の関係を求め、ある場所の個体数と景観の組み合わせにより引き起こされる被害量を推定した。個体数と被害量に対する景観の効果は、個体数について森林が正、水田が負の効果をもち、被害量に対して森林が正、市街地が負、水田が正、竹林が正の効果をもつことが分かった。予測された被害リスクは半島の中心部では実際の被害に対して良い当てはまりが見られたが、半島の北部と南部の地域では当てはまりが悪かった。その原因として市町村レベルで推定された個体数が過小であった可能性が考えられた。今後は小スケールの個体数をより正確に推定するために、箱ワナ以外の新たな密度指標の導入などが望まれると考えられる。


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