| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-113  (Poster presentation)

農地景観におけるミヤマシジミのメタ個体群~生息地連結性と食草パッチの役割~

*出戸秀典(東大・農), 小柳知代(学芸大・環境教育研究センター), 宮下直(東大・農)

近年の開発や放棄による草地の減少は草原性チョウ類の著しい減少を引き起こしている。絶滅危惧1B類に属する草原性チョウ類は各地で減少しているものの、1A類に比べ現状の生息地は少なくないため、減少メカニズムの研究をもとに保全策を考える必要がある。
ミヤマシジミPlebejus argyrognomonは絶滅危惧1B類に属する草原性チョウ類であり、マメ科低木のコマツナギIndigofera pseudo-tinctoriaのみを食草とするスペシャリスト種である。現在の生息地は長野県や栃木県、静岡県の河川敷がほとんどであるが、最近では河畔林の拡大やシナダレスズメガヤの侵入によって河川敷の個体群は危機的な状況である。
長野県上伊那郡飯島町は農地景観でミヤマシジミが見られる貴重な生息地である。コマツナギが水路沿いや大きい法面にパッチ状に生育しており、ミヤマシジミの生息を支えていると考えられる。河川敷の個体群が危ぶまれるなか、農地景観に生息する個体群を保全することは極めて重要であるが、これまで農地景観において本種の生息条件を明らかにした研究例は皆無である。本研究では、農地景観におけるミヤマシジミ個体群の保全を目的に、食草パッチの土壌生条件を調査しすると共に、更に、生息地パッチの連結性と食草パッチの質について調査した。
その結果、貧栄養な土壌条件でコマツナギが生育しやすいということが示唆された。また、ミヤマシジミのパッチあたりの個体数は、コマツナギの被度が高くなるほど増加することがわかった。連結性においては、中程度で個体数が最大となるような単蜂型の関係が見られた。この結果は、連結性がある程度以上大きくなるとレスキュー効果が弱まるとともに、個体間の競合により個体数が制限されてくることが示唆される。


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