| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-121  (Poster presentation)

小湖沼におけるハリナガミジンコ個体群の長期的変動:遺伝構造の季節性はなぜ年により異なるのか?

*柳沼康平(東北大・生命), 八巻圭佑(東北大・生命), 熊谷仁志(大阪大・工学), 牧野渡(東北大・生命), 占部城太郎(東北大・生命)

*柳沼康平(東北大・生命), 八巻圭佑(東北大・生命), 熊谷仁志(大阪大・工学), 牧野渡(東北大・生命), 占部城太郎(東北大・生命)


ミジンコ属は湖沼の代表的な甲殻類プランクトンであり、通常は単為生殖によりメスだけで増殖するが、環境の悪化に備え、オスを産んで有性生殖を行い休眠卵を産卵する。一般に、冬期は浮遊個体にとって厳しい環境であるため、ミジンコ属は休眠卵で越冬し、春先に休眠卵が孵化することで新たな浮遊個体群が創設される。このフェノロジーによれば、Daphnia個体群の遺伝子型(クローン)の多様性は、春に休眠卵から孵化した個体により増加し、その後の種内・種間競争等により季節を追うごとに減少すると考えられる。しかし、私達が調査を行った山形県畑谷大沼のD. dentifera個体群では、クローンの多様性が夏以降に著しく減少する年もあれば、比較的高く維持される年もある。これまでの研究では、個体群密度の季節的動態は詳しく調べられてきたが、遺伝構造の季節変化は殆ど調べられてこなかったため、クローン多様性のフェノロジーが年によって異なる原因については全く判っていない。


  そこで本研究では、ミジンコ個体群の遺伝構造の季節性とその影響要因を明らかにするため、山形県畑谷大沼のD. dentifera個体群を対象とした調査と解析を行った。調査は2008年から2014年の7年間、結氷期を除いて毎月行い、採集したD. dentifera計3442個体について、マイクロサテライト8遺伝子座を用いて個体の遺伝子型識別を行った。この遺伝構造データからヘテロ接合度期待値及び観察値(He、Ho)、Simpsonの多様度指数、クローン豊度、相対クローン数を年ごと及び月ごとに算出した。さらに、個体数や環境データとあわせて冗長性分析を行い、各年の遺伝構造の季節性と越冬個体や、個体群密度、水温などの環境要因等との関係を調べた。これら結果をもとに、ミジンコ個体群の遺伝構造のフェノロジーについて議論する。


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