| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-137  (Poster presentation)

シードバンクを活かした自然再生と市民参加

*白土智子(東邦大学・理), 林紀男(千葉県立中央博物館), 内山香(東京都西部公園緑地事務所), 西廣淳(東邦大学・理)

都市公園の自然池沼に由来する池は、開発に伴い生育場所が減少した水生植物のレフュージアとして機能する可能性があり、生物多様性保全上、重要な場所になりうる。しかし、都市域の池では地形や水質の変化に伴い、水生植物種の多様性が損なわれている場合が多い。植物相の回復可能性の検討では、底質に含まれる土壌シードバンク相の情報が有用である。土壌シードバンク(以下、「シードバンク」)は主に専門家により調査されてきたが、公園の特質を活かしプログラムを工夫すれば、市民参加型研究として行い、より充実したデータを取得できる可能性がある。
本研究は、都市域の公園の池に「植物多様性保全の場としての機能」および「市民参加型研究を展開する場としての機能」を付加できる可能性を明らかにすることを目的とした。
東京都内の公園の池である小合溜と井の頭池を対象に、過去に生育していた証拠がある植物(潜在的植物相)を、文献調査等による過去の植物相調査、現在の植物相調査、実生発生法によるシードバンク調査により把握した。また井の頭池ではシードバンク調査の一部を市民参加型研究として行った。
潜在的植物相として、小合溜では104種、井の頭池では67種が確認された。しかし、現存する種は小合溜では10種、井の頭池では4種であり、植物の種多様性は大幅に低下していた。シードバンクからは地上植生で消失した種を含め、小合溜で13種、井の頭池で15種確認された。このうち絶滅危惧種は、それぞれ3種、5種であった。自然池沼由来の公園の池の底質は植生再生の効果的な材料となりうることが示唆された。
また井の頭池では、市民参加型研究により水生・湿生植物3種がシードバンク中の種として追加され、市民参加型調査の有効性が指示された。参加した市民からはシードバンクへの理解が深まったことが分かる感想が得られ、シードバンク調査は環境教育としても有効なツールになりうることが示唆された。


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