| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-E-159  (Poster presentation)

鳥類の飛翔推定にはどの程度の調査が必要か?

*谷圭一朗, 近藤博史, 松田裕之(横浜国立大学・院・環境情報)

エネルギーの安定的な供給と地球温暖化対策を目的として再生可能エネルギーに注目が集まり、その中でも風力発電事業は世界的には最も発電量の多い方法である。風力発電施設の増加に伴い、風車が生態系に与える影響が顕在化してきたため、風力発電施設は環境影響評価法の対象事業となった。特に、風車は鳥類の衝突死事例が多数報告されており、風力発電を迅速に導入する妨げとなっている。すなわち、風車建設において、鳥類の飛翔分布を把握し、鳥類への影響を推定することは事業を円滑に進めるうえで重要であると言える。
そこで、本研究では、風力発電施設が鳥類へ与える影響を適切に評価するために、鳥類の飛翔分布の推定にはどの程度の調査量が必要になるのか検討した。現在、他地域で作成したモデルを外挿する形で飛翔分布が推定されている。しかし、地域によって飛翔分布は異なるため、外挿したモデルの信頼性は保証できない。そこで、次の①・②を行い、外挿モデルの推定値の変化の検証を行った。

① 一つの地域での実測した飛翔分布をGIS上で200m四方のセルに分け、セル内の飛翔距離を目的変数とし、環境情報を説明変数として飛翔分布モデル作成を行った。
② ①とは別の地域で、①で作成したモデルの推定値を事前分布にとったベイズモデルと、無情報分布をとったベイズモデルの二つを作成し、調査日数ごとに対象地の調査データを加えていくことで、推定値の変化と、事前分布の有無が推定値に与える影響を確かめた。

以上、①~②の結果、一定以上の調査があれば、推定値は一定の区間に収まり、かつ、事前分布の有無は推定結果に大きな影響を与えないことが判明した。


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