| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-199  (Poster presentation)

リーフマイナー群集の葉内利用様式と寄生蜂との関係 ―葉表と葉裏の寄生率比較―

*鳥居裕太(名古屋大・農), 綾部慈子(名古屋大・生命農・森林環境), 肘井直樹(名古屋大・生命農・森林保護)

天敵から受けるtop-down効果は、植食性昆虫の適応戦略の発達や進化に影響を与える重要な要素である。植食性昆虫の中でも、天敵からの影響を強く受けるリーフマイナー (潜葉虫)は、その防衛戦略と寄生蜂との関係が注目されてきた。リーフマイナー幼虫が葉内を摂食することで形成される摂食痕はマイン (潜孔)と呼ばれ、視覚的に非常に目立ち、種や分類群ごとに特徴的な形をしている。リーフマイナーの防衛戦略として、マイン形状の意義がこれまで研究されてきたほか、葉の表か裏かといったマインの空間分布においても、寄生蜂に対するマインの誘因性の差を通じてリーフマイナーの防衛戦略に関わっている可能性がある。本研究では、リーフマイナー群集の葉内利用様式の違いと、寄生蜂による寄生率やリーフマイナーの羽化率、および寄生蜂群集との関係を調査し、防衛戦略の発達・進化要因の一端を明らかにすることを目的とした。
愛知県名古屋市内の二ヵ所の孤立二次林で、2016年の4−9月に約1か月に1度の頻度でリーフマイナー群集のマインを採集、飼育し、マインの形、形成場所 (表・裏)、および内部状態 (生存・死亡・寄生・蛹化)を記録した。また、葉内のマイン形成場所ごとに寄生率、羽化率、寄生蜂の種数の比較を行い、さらに、リーフマイナーの葉内利用様式の違いによって寄生蜂群集構造が異なるのかを検証した。調査期間中、両林分合わせて36種のリーフマイナーが採集された。リーフマイナーについては、葉裏へマインを形成した個体の方が葉表に形成した個体よりも寄生率は低く、羽化率は高かった。一方で、寄生蜂の種数は、葉裏の方が葉表よりも少なかったが、解析の結果、リーフマイナーの葉内利用様式の違いによる寄生蜂の種構成の違いは認められなかった。今回の結果では、リーフマイナー群集における葉裏への潜葉は、寄生率の低下には寄与していたものの、寄生蜂の群集構成には影響していなかったと考えられる。


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