| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-208  (Poster presentation)

センサーカメラを用いた鳥類のヌタ場利用の解明

*前橋香織(東京農大・農・野生動物), 亀村聡(東京農大・大学院・農・野生動物), 松林尚志(東京農大・農・野生動物), 石坂慎吾(多摩川源流大学)

 水場は野生動物にとって重要な環境の一つである。本研究は、林内に自然分布する小規模湧水地(以下、ヌタ場)を訪問する鳥類相ならびにその行動を把握することを目的として、山梨県小菅村のヌタ場4ヵ所、神奈川県厚木市および清川村にあるヌタ場6ヵ所の計10ヵ所を対象にセンサーカメラ(TrophycamHD Bushnell社)をしかけ、自動撮影調査を実施した。
 自動撮影調査(小菅村2009年6月~2017年1月、厚木市及び清川村2016年2月~2017年1月)の結果、6目16科43種が確認された。
 撮影種の主な活動空間は地上(ex:ヤマドリ)、上空(ex:タカ科)、樹上性(ex:キツツキ科)に分けられ、林床に存在するヌタ場を利用する種は地上性の鳥類に限られないといえる。
 ヌタ場での鳥類の行動については、撮影種の88%(43種38種)において水飲み及び水浴び行動が確認された。それ以外に、産卵のためにヌタ場に集まったアズマヒキガエルの成体をノスリが捕食する行動が確認された。また、ノスリが撮影される時期はヒキガエルが出現する時期に集中しており、鳥類のヌタ場訪問時期が餌生物の発生時期と同調していることが伺えた。
 ヌタ場を訪問する鳥類相は季節毎で異なるが、全地点において種数は夏季で最多、冬季に最少となる傾向が見られた。これは夏鳥の種数が多いためではなく、主要なヌタ場訪問期が春季~秋季である留鳥が多いことによると考えられる。留鳥のヌタ場訪問時期の偏りの要因は、冬季の湧水の凍結、(落葉広葉樹林では)落葉によるヌタ場の埋没、水飲み、水浴び等の目的が季節と関連性がある可能性など複数考えられ、今後検証していく必要がある。
 ヌタ場訪問種にはオオタカやクマタカなどの猛禽類、フクロウ、オオコノハズクといった夜行性かつ希少性の高い種も含まれた。したがって、ヌタ場は鳥類の生活空間の一部として機能する場所であるのみならず、多様な鳥類を記録出来るモニタリングサイトとしても有用性のある環境であると言える。


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