| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-212  (Poster presentation)

オオムラサキとゴマダラチョウの起眠コントロール: 観察会当日に羽化を迎えるための手法開発の試み

*中田功大(*中田功大, 高橋 一秋(長野大・環境ツーリズム))

オオムラサキとゴマダラチョウの起眠コントロール: 観察会当日に羽化を迎えるための手法開発の試み

中田 功大, 高橋 一秋(長野大・環境ツーリズム)

要旨
準絶滅危惧種オオムラサキ越冬幼虫と、その近縁種ゴマダラチョウ越冬幼虫の起眠時期を意図的に操作した場合に、起眠率やその後の成長・羽化にどのような影響を与えるのかを分析した。
オオムラサキ越冬幼虫(1組)、ゴマダラチョウ越冬幼虫(3組)を1か月ごと起眠操作実験の開始時期をずらし、その後に起眠した幼虫の個体数とその状態を観察し記録した。オオムラサキの実験開始日は2016年3月26日(28個体)、ゴマダラチョウ1組目(20個体)は2016年3月26日、2組目(18個体)は2016年4月26日、3組目(17個体)は2016年5月26日とし、その後、観察を2016年7月14日まで行った。なお、越冬幼虫は屋外に設置した容器で飼育し、5齢幼虫へと脱皮に成功した時点で起眠したものと定義した。起眠した幼虫は野外に設置したバタフライガーデンで飼育し、その後の成長と生残を約10日ごとに観察した。また、可能な限り天敵の有無やアタックの状況を記録した。成虫になった個体は、捕獲したのち網掛けをして飼育し、交尾と産卵を促した。
起眠に成功した5齢幼虫は、オオムラサキで13個体、ゴマダラチョウ1組目で14個体、2組目で11個体、3組目では14個体であった。各実験開始日から起眠個体を最初に確認するまでの日数は、オオムラサキで45日目、ゴマダラチョウ1組目で30日目、2組目で11日目、3組目では5日目であった。起眠個体を最初に確認した日から起眠個体を最後に確認した日までの期間は、オオムラサキで19日間、ゴマダラチョウ1組目で23日間、2組目で22日間、3組目では8日間であった。起眠実験後に飼育したゴマダラチョウのうち、1個体は蛹まで、4個体は成虫まで達した。また、一部が産卵を行った。オオムラサキの場合は、7個体が成虫まで達した。しかし、産卵には至らなかった。


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