| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-216  (Poster presentation)

河川上流域における底生生物群集の断層診断:第1軸方向の変化について

*井上光也, 宮地萌, 加藤元海(高知大学)

河川における上流域から下流域までの流程に沿った底生動物群集の変化は多くの報告があるが、源流域内における流程に伴う底生動物群集の変化はほとんど報告されていない。高知県内を流れる仁淀川支流の小川川と四万十川支流の黒尊川を対象に、各河川でそれぞれ源流点を含む6地点の合計12地点、2014–2015年の毎年各季節に1回ずつ調査を行なった。十脚目を除く底生動物群集の生物量および個体数は、底生藻類密度が高いほど多かった。分類群別では、流量とともに藻類食性カゲロウや造網性トビケラの個体数が増加した。底生動物が底生藻類密度とともに増えたのは、藻類食性のカゲロウや造網性トビケラのヒゲナガカワトビケラの増加が原因であると考えられる。底生藻類密度と流量には正の相関があったことから、流下物を主な餌とする造網性トビケラのシマトビケラも底生藻類密度とともに増えたと考えられる。日本の河川上流域では、底生動物群集において生物量で優占するのは造網性トビケラ、個体数ではカゲロウ類が優占する傾向にあることから、底生動物群集の生物量と個体数は底生藻類密度とともに増加したのであろう。また、流程に伴って出現した分類群について流量を横軸にとり、ロジスティック回帰分析を行なって出現確率が50となる変曲点を求めた。カワゲラ科では流程に伴ってトウゴウカワゲラ属、カミムラカワゲラ属、オオヤマカワゲラ属の順に出現することが分かった。


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