| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-252  (Poster presentation)

撹乱が群集を他の撹乱に晒す〜Interaction exposure effectsの提案と検証〜

*篠田悠心, 赤坂宗光(農工大)

複数の撹乱の相互作用が生物群集に与える影響は、それぞれの撹乱の影響の和よりも大きくなることがある。このことは、一つの撹乱が、他の撹乱の強度や範囲、特徴を変化させることに起因すると考えられていた。生物群集は、その全ての要素が撹乱に晒されているわけではなく、シードバンクや隠れ家に存在することで撹乱をやり過ごしている要素が存在する。群集内の撹乱をやり過ごす要素は、撹乱後の群集の回復に貢献する。しかし、シードバンクの発芽を促進する撹乱や、隠れ家を奪う撹乱が起こると、生物群集全体のうち、他の撹乱に晒される要素の割合が増加するという撹乱の相互作用が存在することが考えられる。本研究では、ギャップ生成と有蹄類の採食という撹乱を対象にこのような撹乱の相互作用(Interaction exposure effects)が存在することを検証した。

エゾジカの高密度化を経験した北海道の洞爺湖中島において、5つのシカ排除区(2004年設置)とそれに対応する対照区を設定し、その中に4つずつの方形区を設置した。各方形区において、植生調査、土壌採取、開空度と斜度の測定を行った。採取した土壌を三ヶ月間冷暗所に保管した後、その土壌を恒温期内のケースに敷き、発芽実験を行った。そして、植生調査および発芽実験における植物種の出現の有無を、開空度、シカの有無、その交互作用、斜度で説明するモデルのパラメータを推定した。シードバンクの植物についての解析の結果、排除区では開空度の増加に伴い種の出現確率が増加する傾向にあったのに対し、対照区では開空度の増加に伴い種の出現確率は有意に減少した。また、開空度が今回の調査地での最大値になると、対照区の種の出現確率は排除区と比較して約10倍低くなった。これらのことから、Interaction exposure effectsが存在し、撹乱が群集を他の撹乱に晒すことで撹乱が生物群集に与える影響を強めることを検証した。


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