| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-253  (Poster presentation)

佐渡島におけるヒノキアスナロ林の多様な群落構造

*内木翔大, 崎尾均(新潟大学)

佐渡島の大佐渡山地は、海岸から山頂まで急峻で多様な地形が形成されているとともに、気温や積雪などの気象環境も場所によって大きく異なっている。ヒノキ科アスナロ属アスナロの変種で日本固有種のヒノキアスナロは、佐渡島において海岸沿いから山頂まで様々な環境で林分を形成している。本研究はこれらの多様な環境に分布するヒノキアスナロの林分の個体群構造を明らかにすることを目的とした。異なる標高に20m四方のプロットを11か所設置し、上層(樹高1.3m以上)の全個体の樹高とDBHおよび上層全個体と下層のヒノキアスナロの樹木位置図を作成し、各プロットの5個体の樹齢を測定した。また、各プロットの標高、微地形、斜面方位などの環境を調査した。その結果、林分の相観では直幹状、株立状木、匍匐状の林分が見られ、直径階分布では一山型、二山型、L字型、下層密集型の4つのパターンに分類され、樹高階分布も同じ傾向を示した。これらの樹形、直径階分布と斜面勾配、標高や株立ち幹率との間には関係が見られなかった。DBHの増加とともに樹高も増加したが、頭打ちの傾向を示した。一方、樹齢と樹高には、一部は正の相関が、樹齢とDBHの間には、一部は負の相関が見られた。標高と林冠を形成する個体の樹高には負の相関関係が見られたが、標高とDBHには相関が見られなかった。標高と樹齢にも相関がなかったことから、なんらかの環境ストレスがこれらの林分に影響を与えていることが示唆された。株立ち個体率は、低標高域では低い値を示し、高標高域では株立ち個体の多いプロットが出現した。また、斜面雪圧と最大樹高とは負の相関を示し、雪圧が個体サイズや樹形に影響を及ぼしていることが示唆された。これらの結果は、過去の大規模撹乱によって侵入したヒノキアスナロ個体群がクローナル成長をともなって生存し続け、同じ世代の森林でありながら複雑な個体群構造を形成している可能性が示唆された。


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