| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-259  (Poster presentation)

鹿児島県千貫平における小規模な半自然草地の種多様性

*安部真琴, 川西基博(鹿児島大学・教育)

本研究では小規模な草地に注目し,現在樹林化が進んでいる千貫平において現存する半自然草地の立地特性と種組成を把握し種多様性を明らかにすることを目的とした。
種組成を明らかにするため,9m2の調査区を合計73地点に設置し,春と秋の2シーズンに分けて植物社会学的植生調査を実施し,得られた種組成をもとにTWINSPANを行った。その結果,春の調査では7の群落,13の種群が認められた。これらの種群のうちススキ,ネザサ,リンドウ,ワレモコウ,マルバハギなどを含む種群は,全ての群落に共通しており千貫平の代表的な種群であると言える。一方,各群落に依存している種群も認められた。また,秋の調査では8つの群落,15の種群が認められた。春季とは異なり,ほとんどの種群が複数の群落にまたがっており,代表的な種群を明確にすることはできなかったが,ある種群が特定の群落に依存していることは確認できた。
本調査では春,秋ともに第一分割においてシバ型とネザサ-ススキ型に区分され,それぞれに大きな種組成の違いがあることが示された。シバ型群落は土壌硬度が比較的大きく,展望台周辺やトイレ周辺に分布していたことから人が頻繁に踏み入れる場所に成立していると考えられる。これは,ツボクサ-シバ群集に相当する考えられ,カタバミやコナスビ,チチコグサなど,路傍・路上植物も混生していた。また,ネザサ-ススキ型群落は千貫平の草地の大部分を占めることから,千貫平の潜在的な草地はネザサ-ススキ型であると考えられる。この群落は九州で一般的に見られるススキ群団の指標種であるネザサ,区分種であるワレモコウほか,スミレ類やキク科類,ハギ類などの特徴的な草本類が多く分布しており,コガンピも生育していることから,チガヤ亜群集に相当すると考えられた。
このことから,千貫平全体の草原性植物の多様性は異なる立地条件と管理頻度によって維持されていると考えられる。


日本生態学会