| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-289  (Poster presentation)

半乾燥地の森林土壌における真菌・原核生物機能群組成と窒素動態

*岩岡史恵(京都大院・農), 谷口武士(鳥取大・乾燥地研), 山中典和(鳥取大・乾燥地研), 杜盛(中国科学院・水土保持研), 舘野隆之輔(京都大・フィールド研)

植物の成長の制限となる窒素の可給性には土壌微生物の働きが不可欠である。溶存有機態窒素の生成には主に真菌群集の働きが重要であり、無機態窒素の生成には主に原核生物群集の働きが重要である。しかし、すべての真菌や原核生物群集が同等に溶存有機態窒素や無機態窒素の生成に関わるとは限らない。真菌群集には、有機物を分解し溶存有機態窒素を生成する腐生菌だけでなく、有機態窒素を取り込む外生菌根菌も含まれる。また、原核生物群集には、アンモニウム態窒素を生成する分類群だけでなく、硝酸態窒素の生成に関わるアンモニア酸化細菌や古細菌など様々な機能を持った分類群も含まれる。さらにアンモニウム態窒素の生成に関わる分類群の中には、基質や環境条件に応じて分解能力が異なる分類群が存在する。そこで、本研究では、真菌・原核生物の機能群組成に着目し、土壌窒素動態との関係性を明らかにすることを目的とした。
調査は、中国半乾燥地のニセアカシア林およびリョウトウナラ林において行った。土壌真菌と原核生物の群集組成を次世代シーケンサーによって明らかにし、機能群について解析した。原核生物に占める割合の小さいアンモニア酸化細菌・古細菌については、機能遺伝子(amoA)のコピー数を定量PCRによって解析した。また、土壌中の溶存有機態窒素と無機態窒素を抽出し現存量を測定した。
真菌群集の機能群を解析した結果、ニセアカシア林では腐生菌が優占し、リョウトウナラ林ではリョウトウナラと共生する外生菌根菌が優占した。また、原核生物の群集組成は両林分で大きく異なり、さらにアンモニア酸化細菌および古細菌のamoA遺伝子コピー数は、土壌pHの影響を受けてニセアカシア林で多い傾向にあった。溶存有機態窒素およびアンモニウム態窒素はリョウトウナラ林で多く、硝酸態窒素はニセアカシア林で多く、真菌・原核生物機能群組成と関係していることが示唆された。


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