| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-388  (Poster presentation)

放棄竹林拡大に及ぼす侵入地の光環境の重要性

*小林慧人, 北山兼弘, 小野田雄介(京大・農・森林生態)

 近年、西日本を中心に管理放棄された竹林(モウソウチク林)の拡大が深刻である。竹林拡大の主要因として、竹利用の低下などの人為的要因や、隣接する植生や斜面方位などの環境要因が指摘されてきた。これらの要因は侵入個体の光環境と密接に関わると考えられるが、これまで定量的な評価は乏しい。また、これまで竹林拡大の評価は、空中写真や植生図の時系列的な解析によることが多く、数年以上にわたる長期間のデータが必要となり、ある一時の個体群の調査によって拡大を評価する手法はなかった。そこで本研究では以下の3つを課題とした:(1)モウソウチク侵入地の現在の個体群構造から、竹個体群の面的な拡がり方について指標(拡がり指標)を開発する。(2)この拡がり指標値と、過去の空中写真解析から得られる実際の拡大速度との関係性を検証する。(3)拡大速度と侵入地の光環境の関係性を評価する。
 竹の侵入の程度が異なる13地点において、純竹林部(竹の占める割合が本数で95%以上)から拡大フロント部まで幅5mのベルトトランセクトを設置した。竹個体群の拡がり指標には、純竹林部からの相対積算竹稈本数と距離の関係の初期勾配を用いた。また侵入地における高さ1-15mまでの光の垂直勾配を測定した。
 モウソウチク個体群の拡がり指標値と拡大速度の間には正の相関(R=0.47)があった。また、拡大速度を説明する要因を光環境・純竹林の密度・斜角からモデル選択した結果、光環境のみが選択された (R2=0.51)。そして地上13-14m(竹の樹冠位置)における光環境が重要であり、林床の光環境は重要ではないことがわかった。
 以上により、放置竹林の拡大速度は、一回の個体群構造の調査で評価可能な個体群の拡がり指標によって推定でき、竹林拡大の新たな評価指標として有用であることが考えられた。また拡大に影響している要因として、竹の樹冠位置の光環境が極めて重要であることが示唆された。


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