| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-390  (Poster presentation)

独立栄養植物から従属栄養植物への進化条件:独立栄養性・従属栄養性のための種子内資源分配と種子数の影響の理論的解析

*伊藤雅哉, 酒井聡樹(東北大学)

植物は、独立栄養・混合栄養・従属栄養の3種に分類できる。独立栄養植物は、光合成能力を持ち独立して生活する。従属栄養植物は光合成能力を持たず、宿主から資源を得て生活する。混合栄養植物は、宿主から資源を得る一方で、光合成能力も保持している、中間的存在である。植物は、独立栄養植物から混合栄養植物を経て従属栄養植物へと進化したとされているが、その過程には不明な部分が多い。本研究では、これら三者の進化条件を理論的に解析した。
 種子内資源に、独立栄養と従属栄養の為の2種の資源があるとする。独立栄養生活を行う為には独立栄養資源が必要であり、従属栄養生活を行う為には従属栄養資源が必要である。混合栄養生活を行う為には両者が必要である。種子内資源の総量が大きいほど独立栄養/従属栄養者としての生存率は高まるが、生産できる種子が少なくなる。解析では、宿主への遭遇確率等のパラメータに依存した最適戦略が以下のいずれになるかを判定し、その際の種子内資源量・種子数を算出した。

1)従属栄養資源のみを持つ場合
 宿主に遭遇した種子は寄生を試みる。宿主内競争を経て寄生成功した種子は従属栄養生活。寄生失敗した種子、宿主に遭遇しない種子は死亡。
2)独立栄養資源・従属栄養資源の両方を持つ場合
 1)と同様の過程を経て寄生成功した種子は混合栄養生活。寄生失敗した種子、宿主に遭遇しない種子は独立栄養生活。
3)独立栄養資源のみを持つ場合
 全種子は独立栄養生活。

 解析の結果、宿主への遭遇確率が低い場合は独立栄養性が、高い場合は従属栄養性が有利となり、これらの中間値を取る場合は混合栄養性が有利となった。独立栄養性<従属栄養性<混合栄養性の順に、種子内資源の総量が増加し、種子数が減少する傾向が見られた。
 混合栄養性の場合、独立栄養資源・従属栄養資源の双方を一定量以上保持する必要がある為、他の栄養性に比べ、種子内資源の総量が大きくなっていると考えられる。


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