| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-395  (Poster presentation)

平野部のため池におけるミゾコウジュの生育環境と生活史

*山口誉貴(淡路景観園芸学校, 兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科), 澤田佳宏(淡路景観園芸学校, 兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科)

環境省レッドリスト準絶滅危惧種のミゾコウジュ(Salvia plebeia R.Br.) は,洪水の影響を受ける河川敷を主な生育地とする湿生植物であるが,河川堤防の改修や治水の発達によりそのような立地は減少している.兵庫県淡路島の平野に位置する菅谷池でミゾコウジュが確認されことから,本研究では平野部のため池におけるミゾコウジュの生育要因を明らかにし,平野のため池における河川氾濫原の代替地の可能性を検討した.
 南あわじ市の菅谷池と流出水路,周辺ため池を対象とし,現地踏査によりミゾコウジュの分布確認を行った.2016年3月にミゾコウジュが確認できた水際部から陸域部に幅0.5mの帯状調査区(0.5×0.5mのコドラート6~9個に細区分)を6ヶ所設置し,地形断面図を作成した.5月15日の水位を基準とした水位変動を求めた.各コドラートにおいて植物種,被度,植被率を記録するとともに,ミゾコウジュおよび優占種となるヨシの最大草丈と本数を記録した.ミゾコウジュ42個体に目印をつけ,草丈,枝張り,開花結実等の状況を記録した.ため池管理者へ管理・水位状況の聞き取りを行った.
帯状調査区1~3の比高は+120~-21cm,傾斜は約21.4°,帯状調査区4~6の比高は+70~-20cm,傾斜は約8.3°であった.水位変動は100cmを超え,秋~冬にミゾコウジュの生育帯は水没していた.ミゾコウジュの生育範囲は4月には比高-46cm~+76cmであったが,7月には水没により低位の個体が枯死し,比高-31cm~+76cmとなった.4月に2~3で優占していたミゾコウジュの被度は7月には+まで低下し,優占種はヨシに変わった.ミゾコウジュは3月にロゼット葉,4月下旬に茎葉がみられ,5月上旬に開花,6月上旬に結実が始まり,7月から枯死が増加した.以上の結果から,ミゾコウジュは,植生の発達が抑制されている水位変動帯に多く生育し,ヨシが優占する前に水際部で優占し,種子散布を開始していた.水位変動のあるため池は氾濫原の代替地として機能すると考えられた.


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