| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-P-429  (Poster presentation)

オオカメノキとノリウツギの個葉のフェノロジーと光順化が林床での光合成生産に与える影響

*大橋千遼(岐阜大学・応用生物), Melnikova, Irina(岐阜大学・応用生物), 斎藤琢(岐阜大学・流域圏センター), 村岡裕由(岐阜大学・流域圏センター)

落葉広葉樹林の林床の光環境は、林冠葉群の季節変化や葉群密度により時空間的な不均一性が高い。このような環境に生育する低木では、光を効果的に獲得し、効率的に光合成生産に利用することが成長や生存に必要となる。本研究では、林床の光環境と低木の光合成生産の関係を明らかにし、低木のどのような生理生態学的特性が林床での生育に適しているかを考察することを目的とした。
調査は岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地の冷温帯落葉広葉樹林で行った。ミズナラやダケカンバが優占する森林の林床に多く生育するノリウツギとオオカメノキについて、光環境(全天写真、光量子センサー)、個葉の生理的特性(クロロフィル含量、光合成特性、窒素含量)、形態的特性(葉面積、LMA、葉数)の季節変化を測定した。密な閉鎖林冠下と林冠ギャップ下で3個体ずつを対象に調査をした。また、光環境と個葉の季節変化から一生育期間の光合成生産量を推定した。夏期には圃場の開放地に移植した稚樹の葉の生理・形態的特性も調べた。
林床への入射光量は5月下旬には林冠直上の10%未満まで低下し、秋まで被陰状態が続いた。オオカメノキは4月の雪解け後の早い時期に一斉に展葉し、葉の生理・形態的機能を成熟させた。そのため春に効果的に光資源を獲得・利用し、林冠閉鎖前に高い光合成生産量を示した。ノリウツギは高い光合成能力を夏期まで維持したため、林冠閉鎖期間に高い光合成生産量を示した。特にギャップ下のノリウツギは、高い光合成能と気孔コンダクタンス、葉数の増加が豊富なサンフレックの有効利用につながり、夏期でも光合成生産量は高かった。開放地ではノリウツギは強光環境へ順化したがオオカメノキは強光阻害の影響を受けた。これらより、オオカメノキは林床の光環境の季節変化に適応した耐陰性の高い種で、ノリウツギは幅広い光環境に順化できる種であることが、林床での生育を可能としていることが示された。


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