| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-A-005  (Poster presentation)

営巣性と非営巣性のアリジゴクの捕食行動の比較

*神宮彬彦, 林文男(首都大・生命)

 ウスバカゲロウ類の幼虫には、すり鉢状の巣を作る種(営巣性)と作らない種(非営巣性)がある。前者については、幼虫の採集が容易であることからその捕食行動に関する研究がなされているが、後者については、野外で幼虫を見つけることが難しく、捕食行動についての研究はなされていない。本研究では、営巣性のウスバカゲロウ(Baliga micans 以下ウスバ)と非営巣性のコカスリウスバカゲロウ(Distoleon contubernalis 以下コカスリ)の2種について、幼虫の捕食行動の比較を行った。ウスバは東京都狭山丘陵、コカスリは神奈川県三浦半島で採集したそれぞれ43個体、40個体の幼虫を用いた。観察は1個体ずつ行い、直径150 mmの円形容器内に1日入れておいた後、暗期になる直前に餌として生きたフタホシコオロギの若齢幼虫を3個体入れ、そこから13時間のビデオ撮影を行った。その結果、ウスバの幼虫は1個体を除いて巣の位置を変えることはなかったが、コカスリの幼虫は平均1.7回(0〜12回)砂から出ては再び砂に浅く身を隠す(定位)行動をとった。この時の平均移動距離は48.5 mmであった。ウスバの幼虫は容器の中のランダムな位置に巣穴を形成したが、コカスリの幼虫は容器の壁面近くで定位することが多かった。餌の捕食数、餌の摂食時間には両種の間に顕著な違いは認められなかった。一方、野外での幼虫の採集地点を比較すると、ウスバの幼虫で、巣穴が木の根元や石から0〜15 mm未満の場所にあったのは48個体中1個体、15〜30 mm未満にあったのが9個体であるのに対し、コカスリの幼虫は0〜15 mm未満にいたのは50個体中13個体、15〜30 mm未満にいたのが6個体であった。このように、コカスリの幼虫は比較的頻繁に移動(徘徊)するものの、物陰近くに定位して障害物をフェンストラップのように利用して、餌を効率よく待ち伏せていると考えられる。


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