| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-062  (Poster presentation)

エコトーン及びハビタットの組成・配置を考慮した指数とトンボ類の多様度の関係

*ITAGAWA, Satoru, ICHINOSE, Tomohiro(慶應義塾大学)

本研究ではハビタットの組成・配置を示す指数を提案し、ジャカルタ首都圏周辺で確認したトンボ類の多様度との関係を検証した。また、集計範囲及び使用する土地利用セルサイズを変更して各指数を算出し、トンボ類の多様度を説明する適正なハビタットのサイズと空間スケールを精査した。対象地は、ジャカルタ中心地から西部の近・郊外地までの東西40km・南北15kmの範囲で、止水環境を内包する計33箇所を選定し、トンボ類の調査を行った。各調査区で確認したトンボ類の種数及び多様度指数を目的変数とした回帰モデルで、調査区が内包するハビタットの組成・配置を示す指数(COMB)及びハビタットの不均一性を示す指数の説明度合を比較した。集計範囲と土地利用セルそれぞれのサイズの組み合わせ15通りで説明変数の指数を算出した。集計範囲の大きさは、調査区の大きさに該当する500m、及び250m、125m、100m、50mとした。土地利用セルの大きさは、10m, 25m, 50m, 100m, 125m, 250mとした。集計範囲が50m〜250mの場合は、調査区域である500mメッシュの範囲内で合計値、最大値及び最小値を算出した。ハビタットとしての土地利用の集計には、調査メッシュ内の樹林地・草地・水田・農地・開放水面・荒地などを抽出した。分析の結果、両指数ともにトンボ類の種数及び多様度指数に対して、有意な正の相関を示した。各モデルを比較した結果、適合度はCOMBの方が一貫して高かった。集計範囲が500mメッシュの場合では、土地利用セルサイズが50m及び100mで適合度が高くなる傾向が示された。一方で、多様度指数を目的変数としたモデルでは、より微細な集計メッシュと土地利用セルサイズがが採用された。以上より、トンボ類をはじめとした生物多様性を高めるためには、一定以上のまとまりのある複数のハビタットがセットで存在し、エコトーンのような異なる環境要素が混じり合う空間の存在が重要であることが示唆される。


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