| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-067  (Poster presentation)

漁船数の配分と資源管理に関する考察

*岩田繁英(東京海洋大学)

 漁業活動の成果である漁獲物は漁獲量・漁法により質は変化し、それに応じて漁獲物の価格も変化する。漁業者は利益を最大化するために漁獲量を増やそうとするが、漁獲量の増加は個体あたりの扱いを雑にして質を下げる可能性もある。本研究では、漁獲量の増加に伴う質の低下により価格の低下が起こる状況の中で、個人の利益を追求する戦略と社会(ここでは漁港全体)の利益を追求する戦略の違いにより、資源の状態がどの様に変化するか考察した。
 本研究では、同じ漁港から一定数の漁船が二つの漁場に向かう場合を仮定する。漁船は一定数存在し、個々の漁船の漁獲量から得られる利益を最大化する戦略(PBS:Private Benefit Strategy)か全体の漁船の漁獲量から得られる利益を最大化する戦略(CBS:Community Benefit Strategy)のどちらかをとるものとする。また、漁獲物の価格は漁獲量に依らず一定の値をとる場合と漁獲量の増加に応じて減少する場合の2通りを考える。また、配分する漁船は資源の変動に依らず一定である場合とその都度最適な配分数に変化する場合を考えた。
 結果として、魚の個体群が変動し、その変化に応じて漁船の配分数を変えた場合、2つの漁場で漁獲される個体の価値に違いがない場合はCBS、PBSのどちらも資源を確保しつつ漁業ができるが、個体の価値に違いがある場合はCBSのほうがPBSよりも二つの漁場を守りつつ漁業ができることがわかった。一方で、漁獲量が増加することにより価格が下がった場合どちらの戦略でも持続的に漁業を実施することができた。しかし、実際には漁獲量が増加し、廉価となっても取りつくそうとする状況が生じている。このことは本研究で仮定したこと以外の要因が現実には寄与していることが示唆されると考える。


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