| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-080  (Poster presentation)

シカによる植生被害強度はどのように変動するのか‐シカ生息密度及び人為的な生息地撹乱との関係‐

*幸田良介, 辻野智之(大阪府立環境農林水産総合研究所)

近年、世界各地で大型草食獣であるシカの増加と、それにともなう自然植生や農林業への深刻な影響が大きな社会問題となっている。これまで数多くの研究が、シカ生息密度とその影響が単純な比例関係にあるという暗黙の仮定のもと、シカ生息密度の増減を基本軸に森林植生への影響を比較・議論するかたちで行われてきた。しかし2000年代になって、シカの影響が単純にシカ密度依存的には決まらないことが次々に指摘され始めており、シカ生息密度のみに着目する従来の固定概念の見直しが求められている。シカの個体数変動という従来の数的反応の視点に加えて、採食行動の変化という機能的反応の視点を加え、植生被害強度に影響しうる要因を探ることは、森林生態系保全対策を進める上で非常に重要である。そこで、本研究では農地と植林地という人為撹乱環境の存在に着目し、生息環境の人為撹乱がシカの採食行動を変化させうるのか、結果的に森林植生への採食圧がシカ生息密度や生息地撹乱規模によってどのように変動するのかを調査した。
大阪府北摂地域に計99ヶ所の調査地をなるべく均等に選定し、各調査地に50 m×4 mのベルトトランセクトを設置した。各トランセクトにおいて糞塊除去法による調査を行い、各調査地のシカ生息密度を把握するとともに、植生調査から採食率を算出し、各調査地の採食圧の指標とした。また各トランセクトで採取した糞から農作物への依存度を分析した。
発表では各調査地における採食圧に対して、シカ生息密度、周辺環境の撹乱規模、農作物への依存度がどのように影響するのかを一般化線形混合モデルや一般化加法混合モデル等で解析し、森林植生被害に影響し得る要因について議論したい。


日本生態学会