| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-089  (Poster presentation)

東京都青梅市の耕作放棄地における周辺環境と野生動物の行動の関係

*山本尚輝, 倉本宣(明大・農)

現在の日本では、中山間地域において里山のアンダーユースが進行しており、その状況下で耕作放棄地は年々増加している。また、野生鳥獣による農作物被害も年々増加している。耕作放棄地の増加が野生動物の生息適地の拡大を生み、農業被害の増加を招いている可能性があるという報告もある。そこで本研究では、シカやイノシシ等の哺乳類の生息が確認されている東京都青梅市の耕作放棄地を調査地とし、野生動物による耕作放棄地の利用と周辺環境の関係性について考察することを目的とした。
 調査地点を2つ(地点A、B)設定し、2015年5月から2016年10月の期間に自動撮影カメラを設置した。また、同期間中に植生調査を計6回行った。耕作放棄地周辺では、周辺に生息する野生動物の種を明らかにするため、聞き込み調査とフィールドサインの調査を行った。また、周辺農家での被害の有無、鳥獣害対策の有無や野生動物の誘因となるものの有無について調査を行った。
 地点Aでは、大型の哺乳類による利用が多く、ほとんどが通過利用であった。これより、森林に隣接している耕作放棄地から農地等へ向かう通り道として利用していると考えられる。また、このことは姿を隠すのに十分な群落高があるということが影響している可能性がある。地点Bでは、大型の哺乳類の利用はあまり多くなかった。特に、イノシシについては100m以内のススキ群落で何度もフィールドサインを確認したが、調査地点ではほとんど見られなかった。群落高が低く姿を隠す事が出来ない地点Bにはあまり侵入しなかった可能性がある。
 今回の調査で、耕作放棄地の植生や周辺環境のうちのいくつかの要素が野生動物の利用に影響がある可能性が示唆された。特に、群落高の違いによって出現する動物が異なる可能性があると考えられる。今後は、どの程度の群落高でどのような利用のされ方をするのか等詳しい調査が必要である。


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