| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-096  (Poster presentation)

ため池を利用した水辺ビオトープの植生管理に関する研究

*長谷川夏実, 杉浦俊弘, 馬場光久(北里大学獣医学部)

青森県十和田市に、農業用ため池を利用した水辺ビオトープがある。トンボやホタルなどを指標生物として生息環境が整備され、ため池ではブラックバス、水路ではアメリカザリガニの外来種駆除が行われている。また、リスの生息環境として木本植物の植栽や、繁茂した草本植物の草刈りが行われている。しかしこの草刈りは、観察や散策のしやすさといった人の利便性を目的としたものであり、場所によっては外来植物が目立つようになってきた。本研究では、ビオトープ内の外来植物の分布を明らかにし、さらに地域住民の外来植物に対する意識を把握することで、生態系保全に適した植生管理の方向性を提言することを目的とした。

ビオトープ全体を景観のちがいにより5つの調査区に分け、草刈りが行われている調査区はさらに3つに細分した。そして、(1)出現種の在来種と外来種の分類、(2)優占度階級と群度の評価、(3)生態系被害防止外来種リストのカテゴリ区分による分類を行った。また、繁茂が確認されたオオハンゴンソウ(緊急対策外来種)について、ビオトープに隣接する公民館の来場者を対象にアンケート調査を行った。その結果、草刈りが行われている2調査区のうち、ため池を囲む調査区では外来種の割合が高く、カモガヤ(産業管理外来種)が優占する部分があり、他の外来牧草も確認された。一方、水路に近い調査区ではオオハンゴンソウが優占していた。地域住民の85%はオオハンゴンソウを「見たことがある」が、「名前を知っていた」のは24%にすぎなかった。以上のことから、この水辺ビオトープにおいては牧草のこれ以上の侵入を防ぐことと、学習会などで地域住民のオオハンゴンソウに関する認知度を向上させることが重要と結論づけた。


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