| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-C-129  (Poster presentation)

福島県における里山のカエルの集団構造:震災後の個体群回復過程を考える

*松島野枝(国立環境研究所)

 2011年の東日本大震災にともなう福島第一原発事故以降、原発周辺地域では住民避難等のため広範囲にわたって稲作が行われていない。このため水田が草地などに変わり、かつての里山環境が失われつつある。特に、水田に生息するカエルにとっては生息地の急激な減少となっている。今後、復興の過程において水田耕作が再開されたとき、カエル個体群はどのように回復するのだろうか。そこで、カエルがどこからやってくるのかを明らかにするために、福島県の東部地域において水田に生息する2種のカエルであるニホンアカガエルとトウキョウダルマガエルを対象に、遺伝的な集団構造を推定した。ニホンアカガエル19地点、トウキョウダルマガエル16地点で採集した個体からDNAを採取し、各種各個体のマイクロサテライト7座の遺伝子型を決定した。STRUCTUREによる集団構造の解析から、ニホンアカガエルでは2つ、トウキョウダルマガエルでは5つのクラスターを示し、どちらの種も阿武隈山地とその東側にある低地で分かれる傾向が見られた。つまり、東側の低地へは阿武隈山地側からの移動はあまりないことを示している。このことから、今後水田が再開された場合、個体群の回復はおもに南と北側からの移入によって起こる可能性があり、一方で、現在の広域での耕作放棄は低地の集団において南北方向の移動を分断している可能性を示唆している。


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