| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-148  (Poster presentation)

新たに形成された仙台湾東谷地干潟における底生動物群集の時空間変動

*柚原剛(東北大院・生命), 尾崎隼斗(東北大院・生命), 鈴木孝男(みちのくベントス研究所), 占部城太郎(東北大院・生命)

干潟底生動物の多くは,周辺海域より浮遊幼生として分散し干潟へ新規加入する.そのため干潟底生動物の群集形成プロセスは,干潟への定着のしやすさ(分散制限),あるいは定着後の干潟微環境への選好性(ニッチ制限)により規定されると考えられる.仙台湾名取川河口にある東谷地では,東日本大震災の津波により護岸が崩落したため後背部に地盤高,泥質,塩分などが空間的に異質な約10haの干潟が新規に出現した.東谷地はかつて萱場として利用されていたため,刈り取り用の澪筋が現存している.この澪筋は最干潮時でも干出せず,浮遊幼生は澪筋を辿り常に干潟奥部まで加入できると推測される.本研究では,干出しない澪筋を伴う空間配置を持つ新規干潟において,底生動物と環境要因・空間配置との関係性を調査することで,群集形成が分散制限あるいはニッチ制限で規定されているのかを検証した.
 調査は震災から4年後の2015年7月~2016年6月にかけて計8回実施した.干潟内に15調査地点を設け,底生動物の個体数・環境項目を測定した.優占種14種の個体数を目的変数,季節間(時間),調査地点間(空間)を説明変数としたGLMを行い,分布と時空間変動の関係を把握した.次に群集と環境要因,空間配置(崩落した護岸および澪筋から距離)の関係性をVariation Partitioning(VP)およびRDAで評価した.
  その結果、優占種14種中13種で個体数が調査地点間で有意に異なり,季節間では6種で異なっていた.また群集構造の変動の多くは環境要因(25.4%)で説明され,特に低地盤高や泥中の全窒素・全炭素濃度,含水量および珪藻量が環境要因として重要であった。しかし、群集構造の変動の一部は空間要因(8.2%)でも説明され、場所間での群集構造の違いには護岸や澪筋からの距離も影響していた.以上より東谷地の底生動物の群集は,主にニッチ制限で規定されるものの,部分的には分散制限も規定していることが示唆された.


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