| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-218  (Poster presentation)

外来種同士の相互作用は在来生物相にどのように影響するか?

*角田裕志(埼玉県環境科学国際センター)

 本発表は、第61回大会での発表内容に新たなデータと解析方法を追加したものである。以前の発表では、外来種数が増加しても在来生物相に対する影響が単調に増加するわけではないこと、また、生態的特性の異なる外来種間の相互作用によって在来生物相に対する影響が変化する可能性があることを示唆した。本発表では、複数の外来種の相互作用が在来生物相に影響を与えているかを検討する目的で、新たなデータを追加してメタ解析を試みた。
 解析に用いたデータは、前回と同様に外来種による在来生物相への影響が顕著な小規模止水域(農業用ため池)における魚類相をモデルとして、発表者自身による調査データに加えて既往の学術論文や報告書等の公開データを使用した。調査地点ごとの各種の在・不在データが明らかにされていること、対象の外来種(オオクチバス、カムルチー、ブルーギル、コイ)が1種以上侵入していること、外来種の侵入していない池が1箇所以上あること、調査方法や調査地(市町村単位)が明らかであることを条件とした。以上の条件に合致する計11事例(発表者自身の調査による2事例を含む)を解析対象とした。メタ解析の一般的な解析手順に従い、魚類相の均等度と種多様度の平均値について、外来種の侵入有の池に対する侵入無の池の対数比を応答変数とし、各外来種の在・不在、環境要因、サンプリングバイアスを説明変数とした統計解析を行った。
 生態的特性の違いに関わらず、外来種の侵入は魚類相の種多様度の低下と均等度の増加をもたらした。種多様度は捕食種の存在下で最も低く、コイが単独または他の外来種と同所的に存在した場合には比較的高くなった。均等度は捕食種とブルーギルが同所的に侵入した場合に特に高く、それ以外では差が見られなかった。以上の解析結果を踏まえ、複数の外来種の侵入と外来種間の相互作用が侵入先の生物相に与える影響について議論する。


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