| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-225  (Poster presentation)

茨城県南部の小野川上流域における特定外来生物オオフサモの現状

*伊藤健二(農研機構・農業環境センター), 芝池博幸(農研機構・農業環境センター), 楠本良延(農研機構・農業環境センター), 嶺田拓也(農研機構・農村工学研究部門), 金谷弦(国立環境研究所)

オオフサモは南米原産の抽水植物で、現在ではアジア・南アフリカ・北米等で野生化し世界的な侵略的外来種として認識されている。日本国内では河川や水路、ため池等でさまざまな問題を引き起こすことが知られており、2005年に特定外来生物に指定された。本種への対策は多発した現場で物理的な駆除が行われることが多いが、本来は発生初期の予防的対策が望ましく、その際には発生状況や拡大に関する情報が重要となる。茨城県南部の小野川上流域では、遅くとも2012年頃からオオフサモの発生が確認されていたが、その分布の詳細は明らかではなかった。そこで、小野川から稲荷川、牛久沼に至る範囲での本種の調査を行うと共に、その侵入・拡大過程に関する検討を行った。
 調査の結果、小野川上流部および源流域(雑排水路や農業用排水路を含む)を中心に高い密度の発生が見られたが、下流及びその支流である稲荷川では密度の低下、もしくは不在となる地点多くなった。上流部では特定の水路においてのみ発生が見られたため、本種は一部の水路に侵入・発生した集団が下流方向に分布を拡大していると推察された。稲荷川中・下流域では一部で根の切れたオオフサモの断片や、淀みに定着した小規模な群体が確認され、これらは小野川上流部から流れ着いた断片による拡大途上にあると推察された。小野川周辺の水田の一部でオオフサモの侵入・定着が見られたが、それらは全て農業用水路からの流入口付近に集中しており,灌漑水を経由した拡大の可能性が示唆された。小野川や稲荷川は共に農業用水に利用され、また農業排水路としても重要であるため、本種の大規模な発生によって取水障害や排水障害が引き起こされかねない。上流部での対策は、周辺地域での被害防止のみならず、下流方面への新たな拡大を防止する上で重要となると考えられた。


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