| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-235  (Poster presentation)

北海道における国内外来種トノサマガエルの繁殖期の解明

*本間詩織, 更科美帆, 吉田剛司(酪農学園大学大学院野生動物学)

トノサマガエル(Pelophylax nigromaculatus)は,北海道では在来種に強い影響を与えるとして北海道生物多様性保全条例における指定外来種となった.北海道においてトノサマガエルは水田やビオトープのような人工的な水域環境を生息地とする.トノサマガエルの繁殖は気候や水入れの時期,水温などに影響を受け,水の入る時期が異なる生息環境では繁殖の開始時期も生息地ごとに変化する可能性がある.しかし,北海道においてトノサマガエルの繁殖に関する情報は乏しい.そこで本研究では,北海道で水の入る時期が異なる4つの地点で音声モニタリングを実施し,鳴き始めや繁殖のピークと気候または水温の要因解析から,北海道におけるトノサマガエルの繁殖時期の特徴の把握を試みた.
 音声モニタリングは2016年4~10月に中干し水田,早期湛水水田,農業ため池,都市ビオトープ池において実施した.録音時間は20時から毎日10分間に設定した.トノサマガエルの鳴き声の変化を把握するため,4つの評価基準(0:鳴かない,1:時々鳴く,2:複数個体鳴くが途切れる,3:絶えず鳴く)を設けた.絶えず鳴く日が連続で確認された場合を繁殖のピークとし,GLMを用いた解析からAICによるモデル選択によって,トノサマガエルの繁殖のピークには気候や水温が影響しているかを解析した.
 トノサマガエルの鳴き始めは早期湛水水田と農業ため息(4月25日),都市ビオトープ池(5月7日),中干し水田(5月9日)の順になった.鳴き声の変化からは,鳴き始めてから約10日後に繁殖のピークを迎えていることが明らかとなった.AICモデル選択の結果,中干し水田と早期湛水水田では最高気温,年ビオトープ池では水温が選択され,農業ため池では繁殖のピークと関連する変数は選択されなかった.


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