| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-244  (Poster presentation)

北海道北見地方におけるマルハナバチタマセンチュウ感染バチの生息環境

森脇早織, 吉田祐奈, *村林宏(日本赤十字北海道看護大学)

北海道内では10種類の在来マルハナバチ類、および特定外来種のセイヨウオオマルハナバチ(セイヨウ)が存在する。セイヨウは導入から20年足らずでほぼ全道にその分布を拡大している。そのマルハナバチに感染する、マルハナバチタマセンチュウ(Sphaerularia bombi;タマセンチュウ)という寄生虫が存在する。本研究では、北見市におけるタマセンチュウ感染状況と生息環境を明らかにする。
調査地は北見市内のN公園(森林環境)とK公園(開放環境)で、調査時期は、春期(4―5月)、夏期(6―7月)とした。捕獲したセイヨウは開腹し、タマセンチュウ感染(卵巣)の有無を確認した。2公園間および時期ごとのタマセンチュウ感染率の差についてχ二乗検定を行った。また、クイーンとワーカーに区別して、時期ごとの出現率の変化を示した。
N公園、K公園、それぞれの総捕獲数は348頭、318頭で、タマセンチュウ感染個体は243頭(感染率69.8%)、19頭(感染率6.0%)であった。N公園での感染率が有意に高かった(p<0.01)。ワーカーへの感染は認められなかった。これは、タマセンチュウは、地中で越冬中のマルハナバチ女王に感染する。N公園で捕獲されたセイヨウのほとんどがクイーンであり、森林環境がセイヨウの越冬、タマセンチュウの生存に適した環境であると考えられる。
2公園におけるクイーン比率(クイーン数/総捕獲数)は、N公園が96.7%、K公園が75.5%であった。時期ごとのクイーン感染率は、N公園の春期で47.4%、夏期で100%、K公園の春期で4.7%、夏期で13.0%であった。N公園(p<0.01)、K公園(p<0.05)共に、夏期の方が有意に感染率は高かった。タマセンチュウ感染クイーンは、営巣活動ができず、自身で訪花・採餌を継続するため、結果として、夏期に感染クイーンの捕獲頻度が高くなったことを示唆する。


日本生態学会